バードストライク:航空機と鳥が衝突するとどうなるのか?

バードストライク:航空機と鳥が衝突するとどうなるのか?

航空機の飛行中、鳥との衝突は珍しいことではありません。この現象は「バードストライク」と呼ばれ、航空安全上の重要な課題となっています。最近、ニュージーランドのクイーンズタウンを出発したヴァージン・オーストラリア航空の便が、離陸直後にエンジンから大きな音と炎を発し、緊急着陸を余儀なくされました。この事故の原因は「バードストライク」の可能性が高いとされています。

バードストライクの歴史と頻度

バードストライクの記録は、1905年にオーヴィル・ライトがオハイオ州のトウモロコシ畑上空で経験したのが最初とされています。それ以来、バードストライクは日常的に発生しており、鳥の渡りの時期には特に頻度が高くなります。

2009年に起きた有名な事例では、ニューヨークのラガーディア空港を離陸直後のUSエアウェイズ1549便が、カナダガンの群れと衝突し、両エンジンが停止。機長のサリー・サレンバーガー氏の判断により、ハドソン川に不時着水するという劇的な出来事がありました。

統計を見ると、その頻度の高さが分かります。オーストラリア運輸安全局の記録によると、2008年から2017年の間に16,626件のバードストライクが報告されており、年間平均で約1,662件発生しています。さらに驚くべきことに、アメリカ連邦航空局の報告では、2022年だけで17,200件ものバードストライクが発生しています。

バードストライクの発生場所と影響

国際民間航空機関によると、バードストライクの90%は空港付近で発生します。特に、航空機の離着陸時や、鳥の活動が活発な低高度での飛行中に多く発生します。

バードストライクの影響は、航空機の種類や衝突の状況によって様々です。大型旅客機の場合、エンジンの停止などが起こる可能性がありますが、多くの機体は単発エンジンでも安全に飛行できるよう設計されています。一方、小型機、特に単発エンジンの航空機では、致命的な事故につながる可能性があります。1988年以降、世界中で262人の死亡事故と250機の航空機の損壊が報告されています。

バードストライク対策

航空機メーカーや航空会社、空港当局は、バードストライクのリスクを軽減するためにさまざまな対策を講じています。

パイロットは、鳥の活動が活発な早朝や日没時に特に警戒するよう訓練されています。また、地上レーダーを使用して鳥の群れを追跡する技術も開発されていますが、世界中で利用可能というわけではありません。

ボーイングやエアバスなどの大手航空機メーカーは、ターボファンエンジンを採用しています。これらのエンジンは、バードストライクに対する耐性を高めるため、鳥の死骸やゼラチン状の鳥の模型を高速で発射する試験を行い、安全性を確認しています。

空港側の対策としては、オーストラリア政府の民間航空安全局が発行した野生動物ハザード管理に関する通達に基づき、様々な方法が取られています。この通達は鳥類に限らず、空港周辺の野生動物全般に対するハザード管理を指針としています。例えば、小規模なガス爆発を使用して散弾銃の音を模倣し、鳥を滑走路付近から遠ざける方法や、野生動物を引き寄せにくい草や植物を空港周辺に植える方法などが採用されています。

まとめ

バードストライクは、航空安全上の重要な課題であり続けています。統計が示すように、その発生頻度は決して低くなく、特に空港付近での発生リスクが高いことが分かります。航空業界は、エンジンの設計改良や空港周辺の環境管理など、様々な角度からこの問題に取り組んでいます。

しかし、自然界と人間の活動が交錯する以上、バードストライクのリスクを完全に排除することは難しいのが現状です。そのため、継続的な対策の改善と、事故発生時の適切な対応が重要となります。パイロットの訓練や航空機の設計における安全性の向上など、今後も多面的なアプローチでの取り組みが続けられることでしょう。

バードストライクは、人間の技術と自然界との接点で起こる現象であり、航空安全の向上と環境保護のバランスを取りながら、解決策を模索し続ける必要があります。

The Conversation